口腔ケアにはたくさんの効果があります。
訪問歯科は治療だけではなく、口腔ケアも行います。
誤嚥性肺炎 ごえんせいはいえん
普段なにげなく行なわれている摂食嚥下機能は、このような高度なメカニズムの連携プレーにより成り立ち、脳からの命令に従って舌や頬、喉などの周囲の筋肉の動きが互いに協調し合いそれらが三位一体となってはじめて正確な嚥下へと導かれていきます。
口から食道へ送り込まれた飲食物には、当然、唾液中の沢山の細菌が付着しているはずです。無事に食道を通過した食べ物と細菌は、胃の中で胃酸と混ざり合うことで細菌は死滅してしまうでしょう。ところが、食道の入口と、空気の通り道である気管の入り口は隣り合っていますので、嚥下する際、食塊や水分を敏感に察知して気管に蓋をする喉(こう)頭蓋(とうがい)がきちんと閉鎖されなければ唾液からだけでなく、ノド、鼻からの細菌が誤って気管に侵入するとも限りません。
また、食事時にムセや咳が起こる時は、嚥下する際、喉(こう)頭蓋(とうがい)がきちんと閉鎖されずに、気道に入りこんだ(咽頭侵入)水分などが、異物の侵入を防ぐ言わば防御反応として気道から排出されているのです。特に水分は、嚥下しようとする瞬間に喉頭蓋につたわって入り込みやすいので固形物以上に注意が必要です。気管には声を出す声帯(声門)があり、このような異物の侵入に対して敏感に反応して咳やムセとなって気道を防御してくれますが、一連の嚥下がスムーズに行われずにさらに防御反応が損なわれて声門より下方へ異物が入り込み、誤って気道に飲食物が侵入する嚥下を誤嚥(ごえん)と呼び、誤嚥により唾液中の菌が気管に入り込み感染して起こる肺炎が誤嚥(ごえん)性(せい)肺炎(はいえん)なのです。
心臓疾患、動脈硬化などの原因の一つにも口の細菌が関与しているとも言われておりますので、今までは老化現象の一つと諦めていらっしゃった方も決して諦めることなく、口腔ケアに励み、手や足を動かして筋肉を鍛えるように、舌や口に関係する筋肉を動かすことにより症状を早期に改善することが望まれます。
不顕性誤嚥
ムセない誤嚥、静かなる誤嚥、それが不顕性誤嚥です。誤嚥しそうになれば誰でもムセたり咳こんだりするとは限りません。誤嚥の防御反応としての反射がムセや咳き込みです。その反射によって、咽頭などに侵入した飲食物を外へ出してくれるのですが、摂食嚥下障害が重篤になると防御機能の感受性が低下し、外に顕れずに誤嚥することもあります。特に肺炎の既往がある方は、不顕性誤嚥のリスクが高くなると言われていますが、いずれの場合でも口腔ケアの徹底、歯と歯肉境目のポケットをバス法などで磨くことにより少しずつ快方へ向かうことが分かってきています。
300種類ものバクテリアが居ると言われている口腔内の細菌が侵入するのを防御するシャッター、喉(こう)頭蓋(とうがい)の役目は重要です。しかしそのシャッターを動かしているのは喉や顎の周囲の筋肉です。筋肉は、運動不足や栄養状態、加齢などによりダメージを受けやすい場所です。全身が衰えてくると、当然、喉の周囲の筋肉の動きも悪くなります。その上、加齢により咽頭部全体が下方へ下がりぎみになり、喉頭蓋がうまく閉鎖できなくなることも、いっそう誤嚥のリスクを高めています。
誤嚥しないようにするにはどのようなことに気をつければよいのでしょうか?
●うがいや舌を含む口腔清掃に心がける
●嚥下反射の機能を高める
●咳反射の機能を高める
●いつまでも口から食べる
上記のポイントをふまえて
うがいや歯磨き、舌苔の除去の励行(誤嚥の疑いのある方は食前のケアも必要) ・食べる前に口腔機能トレーニング(顎や唾液腺などのマッサージ、発声練習、健口体操、空嚥下、舌の突き出しなど)を5分間は試みる。
できる限り食事に集中できるような食卓、食事の環境を整えて、何をどれだけ食べるのか?飲み込むのか?と、一連の摂食と嚥下の運動を仮想、確認しながら食事をとる。
食後は、なるべくおなかを圧迫しないような座位の姿勢を30分間は保つ。 食後、すぐ横になり腹部を圧迫するような姿勢をとると、胃から内容物が逆流して口へ戻り、口のなかの細菌が加わった上で誤嚥することもあります。
*誤嚥にはお食事の内容や形態も関わっています。栄養士さんへのご相談もお勧めします。
誤嚥性肺炎:摂食嚥下のメカニズム